茶道教室に入門したら、どんなお稽古から始めるでしょうか。
教室により異なるかも知れませんが、私の教室の例を説明します。
まず最初は、歩き方、座り方、お辞儀の仕方、襖の開け閉めなどの、「和室での基本的な立ち居振る舞い」から学びます。
茶道というと、茶筅をもって、抹茶とお湯の入ったお茶碗をシャカシャカかき混ぜているイメージがあるかも知れませんが、これは「亭主」の役割の一部分で、まずは、「客」としての振る舞いかから学びます。
客が茶室に入ることを「席入り」と言いますが、客は、亭主が室礼を準備した茶室に入り、床の間や、据え置いてある釜などの道具を拝見し、それから所定の席に座ります。
(茶道では、客の席入りが済んでから、亭主が登場してお点前が始まります。)
次に「お菓子のいただき方」を学びます。
後に続く人に「お先に」といって、まわってきた菓子器から自分の分を取る、その「取り方」、そして取ったものの「いただき方」ですね。
茶道では、「懐紙」を使ってお菓子をいただきます。
ただお菓子を取り、いただくという、そのシンプルな所作ですら、慣れている人とそうでない人の差ははっきりと現れますし、一つひとつの所作に性格が現れたりもします(^ ^)
茶道では、お菓子を食べながら同時に抹茶を飲むことはしません。お菓子をいただいた後に、抹茶をいただきます。
ということで、お菓子をいただいたら次は「お茶のいただき方」ですね。
これも、後に続く人に「お先に」と言うとか、飲む前に膝前に置いて、亭主に「ちょうだいします」と挨拶するとか、茶碗の持ち方、飲むときに茶碗の正面を避けて飲む等、作法を学びます。
こうした、客としてのお茶とお菓子のいただきかたや、立ち居振る舞いを学んでから、次は、亭主として、お茶を点てる稽古が始まります。
帛紗(ふくさ)の捌き方(さばきかた)、道具の清め方、柄杓(ひしゃく)や茶筅(ちゃせん)の扱い方など、一気に全部というよりは、部分部分で「割稽古(わりげいこ)」していき、やがて一連の流れに移っていきます。
以上はほんの「さわり」です。
これだけで、「面倒臭そう」に思われるかも知れませんが(笑)。
しかしそもそも、茶道の稽古は、いわゆる効率を求めてしているわけではありません。
「わざわざ」非効率的にも見えることを、やっていますが、その過程の中で、自身の立ち居振る舞いや、所作、周りの人と波長を合わせて場を作り上げるコミュニケーション力、などを養うことにつながります。
また、立ち居振る舞いだけでなく、歴史や古来からある慣習、禅の思想、茶道具やお菓子、花の知識など、広く文化や芸術に関連する要素が詰まっており、幅広い世界に触れられるのが、茶道の魅力です。
こうした幅広い、奥深い世界なので、いつまでも完成はありません。ですから、茶「道」です。
細く長く、少しずつ、お稽古を重ねて、その人なりに気づきがあれば良いのだと私は考えています。
千利休の孫の宗旦(そうたん)が、
「茶の湯とは、耳に伝えて目に伝え、心に伝え、一筆もなし」
という言葉を残しています。
茶道は、あれこれ言葉で理解するのではなく、お稽古という体験を通じて学んでいくもの、という意味です。
ですから、茶道を始めるにあたっては、知らないことだらけでも何も心配はありません^ ^