「茶の湯とは、耳に伝えて目に伝え、心に伝え、一筆もなし」
千利休の孫・宗旦の言葉です。
茶道は、本来、何かマニュアルを読んで理解したり、お点前の順序を覚えて完成するような稽古事ではありません。
茶道の稽古は、「古を稽う(いにしえを かんがう)」という字のとおり、古人を思いおこし、その経験に習うことといえます。
長い年月をかけて伝えられてきた「型」を理屈として頭で知るだけでなく、からだで覚え、
そして、亭主と客が、型という振る舞い方をかけ橋として、心のはたらきを呼び覚まし、互いの心を通わせあう、
茶室の室礼から季節の移ろいを感じ、道具を実際に手に取れば、その作り手の思いや時代背景をも想像してみる・・・。
そうした「体験」を通じて、日本的美意識が宿る「こころ」と「かたち」、すなわち「茶のこころ」に触れていく「道」なのだと思います。
ひととき、効率という概念から離れ、スマホから離れ、稽古に集中することは、自分と向き合う、まさにマインドフルな時間です。
暑い日に一瞬吹き抜けるさわやかな薫風のように、茶道のお稽古が、皆さんの人生を豊かにする小さな気づきの連続でありますように。