先日、サントリー美術館の「歌枕〜あなたの知らない心の風景〜」を観に行って来ました。
茶の湯をしていると、「和歌」に触れることもしばしばあり、日本の風情や日本人の美意識というものが、まさに「和歌」に表れていることがよくわかります。
茶道を深めていくには、和歌についても勉強しないとなぁ・・とは感じておりましたが、この展覧会を見て、改めて、日本的美意識なるものは和歌を源流とすることを実感した次第です(今更ながら・・・)。
日本人ほど歌を詠んできた民族はいないと、ある本(※)に書いてあったことを思い出しますが、万葉集の成立が奈良時代末期(8世紀頃)、古今和歌集が平安時代(10世紀頃)、と1000年以上も前ですから、確かに、古来日本人の風俗に、「歌を詠む」ということがいかに根付いていたのか想像できますね。
とはいえ、現在では、和歌を詠める人は皇族の方以外いないんじゃないかと思えるほど、和歌を嗜む人が少なくなった世の中なので、この「歌枕」という言葉自体もあまり聞きなれない言葉です。
私もこの展覧会に行くまで知りませんでしたが、その意味は、
「長い和歌の歴史の中で培われた、特定のイメージをともなう土地や地名」
のことを言うそうです。
茶道具でも、桜の絵があるものを「吉野」、紅葉の絵があるものを「龍田川」といったりするのですが、なぜ、桜なら敢えて「吉野」なのか、紅葉なら敢えて「龍田川」なのか、(奈良以外にも名所はいくらでもあるので)疑問に思っていたのですが、この「歌枕」の存在で、やっとその理由が腑に落ちた気がします。
以下、サントリー美術館の解説を参考にさせていただきます。
「歌枕」は、古くは和歌に使用される言葉全体を指していましたが、「和歌」という形で、名所と言われるような場所や風景が、繰り返し詠み継がれることで、特定のイメージが定着し、自らの思いを表わすための重要な言葉や技法として、歌人の間で広く共有されるようになり、
平安時代末ごろには、歌枕=和歌によって特定のイメージが結びつけられた地名、
の意味に限定されるようになりました。そして、
歌枕の抽象的な「名所絵」は、美術とも関わりながら展開していき、茶道具などのデザインにも使われるようになっていき、
そうした経過の中で、先ほどの、桜といえば「吉野」、紅葉といえば「龍田川」というイメージが定着し、道具の銘としても使われるようになっていった、
ということだったんですね。。。。納得です。
ちなみに、ススキが描かれた原野に月が沈んでいく様子が描かれているものを「武蔵野」と呼ぶのですが、「なんで武蔵野なん?」と思っていました。

これも、多くの歌人が関東の武蔵野台地のこうした風景を歌に詠んだことから、「ススキにお月様」という意匠が「武蔵野」で定着するわけですね。
この展覧会で「和歌にまつわる美術品」を鑑賞し、日本人って、ほんとうに、四季の移ろう情緒や愛しい人を思う切ない気持ちなど、美しく言葉や絵に表現してきたんだなぁと感動しました。
何とも素敵じゃぁないですか。。
実際書かれた和歌は、解説を見ないとなかなか読めませんが、でもそんなことは関係なく、日本語、特に「ひらがな」は、見ているだけで、その姿形が本当に美しいです。
私もそのうち、ささっと短冊にでも歌を書けるようになれるといいのですが。。。。
*「むかしむかしあるところにウェルビーイングがありました〜日本文化から読み解く幸せのカタチ」石川善樹・吉田尚記著/KADOKAWA
