濃茶の茶器「茶入れ」と「仕覆」

濃茶用の抹茶を入れる茶器は、ふつう「茶入れ」と呼ばれる焼き物が使われます。

もともとは、中国から渡来した、薬入れ等に使われていた入れ物が茶入れとして使われていたと思われます。
こういった焼き物は「唐物(からもの)」と言われ、いわゆる名物と呼ばれる茶道具には唐物が多くあります。

室町時代以降、茶の湯が社会に広まって、需要が増すにつれ、日本でも茶入れが作られるようになっていきます。

国産の初期の茶入れは、瀬戸(愛知県)で焼かれた瀬戸焼で、その後、他の地方でも作られるようになっていきます。

古いものでは、備前(岡山)、丹波(兵庫)、信楽(滋賀)辺りでしょうか。
今は、全国各地にその地名をとって「○○焼」というのがありますね。数は60以上はあります。

ところで、茶入れにはその形によって、「肩衝(かたつき)」「文琳(ぶんりん(りんごのこと))」「茄子(なす)」「鶴首(つるくび)」など色々あります。

こちらは「肩衝」です。

蓋は象牙、裏面には金箔を押してあることが多いです。こんな感じ。

そして、茶入れは使うときには「仕覆(しふく)」に入れて茶室に飾ります。

仕覆に使われる裂の種類には、金襴、銀欄、緞子、間道(かんとう)、錦、など色々あり、茶入れの品格によって名物裂が使われます。

名物裂といっても400種類ぐらいあるらしいのですが、それらも、長い歴史の中で大陸から渡来したものが多くあります。
日本に渡来して、日本名が付けられるに至っています。

たとえば、この名物裂は吉野間道(よしのかんとう)と言われるものです。
寛永の三大芸妓の一人と言われた吉野太夫(よしの たゆう)に、京都の豪商(ま、今でいうダンナですね)が贈ったとものと言われ、このような名前がついています。

こちらは、利休が愛用した「利休緞子(りきゅうどんす)」と言われる名物裂です。5つの点で梅花文をあらわしています。

仕覆には「緒(お)」がありますが、茶入れに抹茶が入っている時と入っていないときで緒の結び方が違います。

左が、抹茶が入っているとき。右が、入っていないとき。
抹茶が入っていない時は、緒を「休めて」あげるのです。

ちなみに、平たい茶入れのときには「長緒(ながお」」と言われる、緒がとても長い仕服を使い、緒の結び方もちょっと違ったりします。

国によっては、原色の色彩・配色が好まれる文化もあると思いますが、日本の場合は、これら仕覆の色合いを見れば、「はんなり」した色彩・配色が伝統的に好まれてきたということがわかります。

茶入れの姿、仕覆の柄、色などが多種多様なのも、茶道の楽しみの一つといえます。

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