茶道の作法:扇子(客の作法)

茶道では、客は扇子をもって茶室に入ります。

まず、膝前に扇子を置いて、一礼して茶室に入り、床の間を拝見するときや、点前座で釜などの点前道具を拝見する時にも膝前に置きます。

こういった扇子の使い方は、結界を引く、という意味があるのかと思います。

結界という言葉は本来仏教用語ですが、茶道では、こうして膝前に扇子を置く所作をすることで、向こうの世界とこちらの世界を分かち、向こうの世界への敬意を現す意味をなすのです。

客が全員席入りをし、亭主とあいさつを交わすまでは、扇子は右膝横に置いておきます。
亭主が席に入ってくると、正客から順番に挨拶をしますが、客はその際、ひと膝前に進み、扇子を膝前において、挨拶をします。

扇子を使わない時は、帯の左側にしまっておきます。

このような茶道における扇子の使い方は、はじめに習う基本的な作法の一つです。

ところで、扇子文化は、もともと奈良時代に宮中ではじまった文化で、

はじめは、仰ぐためではなく、メモやノートの用途として使われていて、和歌を書いてプレゼントにしたり、花をのせて意中の人に送ったりと、風流なコミュニケーションツールでもあったようです。

今でも、扇子をそんな風に使ったらきっと素敵ですよね。
詩を書いた扇子を女性に送る男性、悪くないと思います。

その後、鎌倉時代から室町時代に、能や狂言、日本舞踊などでも使われる重要な道具の一つとなり、江戸時代ぐらいには、一般庶民の間にも広まっていったのではと思います。

そういえば、最近は、真夏に小型扇風機(正式名称なんなんでしょう?)をもって歩いている若い人をよく見かけますが、おしゃれな扇子をさっと鞄から出して、自然な所作で仰いでみるのも優雅で良いのでは?!と思ったりします。

まぁ、優雅さなんて、考えていられないほどの酷暑なんですけどね。。。

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