茶道の作法:茶席の菓子

茶席で供される菓子は、あくまで「お茶を」美味しくいただくためのものではありますが、その季節感、美しさ、繊細さ、もちろん美味しさも含めて、茶道における楽しみのひとつであることは否定できません。。

懐石も食す正式な茶会(茶事)においては、懐石の後、濃茶をいただく前に出される菓子を「主菓子(おもがし)」と呼んでいます。
練り切りやきんとん、薯蕷饅頭など、季節感を取り入れた上生菓子が出されることが多いですね。

これに対して、薄茶席では、麩焼や落雁など口どけの良いものが供されることが多く、これらは「干菓子(ひがし)」と呼ばれます。

もっとも、「こうでないといけない」ということではないので、茶会の趣旨や菓子器との取り合わせなどに応じて、自由にして構いません。
昔、砂糖が広く一般に供給される前は、栗とか柿とか、果物が茶席における菓子だったと思われます。

ただ、一期一会の機会を尊ぶ茶道ですから、主菓子は、日持ちするような菓子ではなく、作りたてのものの方が、ご馳走と考えられます。
といっても、菓子を手作りするのも簡単ではないので、季節の花など自然を模した上生菓子をお店で求めて、それを用いるのが今では一般的になっています。
季節ごとに、趣向を凝らした上生菓子が店頭に並んでいるのを見るだけでも楽しめます。

 

和菓子は、四季の明確な日本だからこそ、非常に芸術性の高いものに昇華されてきました。
このような和菓子の文化は、戦乱が落ち着いて平和な時代が続いた江戸時代に開花し、今ある上生菓子の原型のほとんどが江戸時代に生まれたもののようです。

写真は、塩瀬総本家の「濡れ燕」という練り切りです。
梅雨の季節にふさわしい上生菓子ですね。塩瀬総本家は660年の歴史があるとか。

 

菓子のいただき方としては、菓子鉢か盆に乗せて出された菓子を、正客から順番に、膝前に置いた懐紙の上に取ってから、お皿のように持ち上げていただきます。
一般公開されている茶会ですと、一人ひとりに対して、それぞれ個別に(銘々皿で)出されることも多いと思います(下の写真のような感じ)。お茶に慣れてない方にとっては、出された形でそのままいただくことが出来るので、この方がラクです。

なお、お茶を飲むときもそうですが、菓子を取るときも、次の方に対して「お先に」と声をかけます。

こういった気持ちを表すことは、茶道において大切な作法です。

 

順番としては、菓子を食べた後に、お茶をいただきます。お菓子を食べながらお茶を飲むのではありません。

お茶を美味しくいただくためにこそ、その前に菓子をいただくというのが菓子の位置づけなのです。

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