茶道具:茶杓

茶杓(ちゃしゃく)。

茶杓は、茶器に入っている抹茶を茶碗に入れるための、いわばスプーンですね。

かつては、必要な時に亭主が削って作っていたものだったと思われますが、今では芸術作品として、作った人を体現する高い精神性をもつものとして、茶道具の中でももっとも高値がつきうる道具になっています。
(原価はもっとも安いと思いますが。。。)

高値がつくというのは、たとえば、作った人が歴史上の著名人である、古くから茶道具として伝えられてきた、といった価値が反映された結果である場合もあれば、誰が持っていた、どこにあったという履歴が「伝来」として重んじられ、価値が高められるということも多くあります。

このような選定基準は茶道・茶の湯の世界にみられる独特の基準かも知れません。
茶道がとっつきにくい理由の一つかも。。。

 

ところで、茶杓には、部位によって名称があります。
たとえば、抹茶をすくう先の部分を「櫂先(かいさき)」と言い、カーブのところを「撓め(ため)」、持ち手の部分にある節の部分をそのまま「節(ふし)」と言います。
節のない茶杓もありますし、櫂先や撓めも、形状によってまた色々呼び方があります。

使われる素材は、竹がもっとも多いと思います。他には、桜、桑、梅の木、象牙、漆などもあります。

茶杓には「銘(めい)」が付けられているものが多くあります。美術館に展示されるような名品には銘があるのが普通です。

銘は、茶杓を作った人がその思いを表すものとして付けることもあれば、伝来の経緯の中で、誰かが付けることもあると思います。

私は、もちろん名品と呼ばれるような高価な茶杓はもっていませんけれども、友人からプレゼントしてもらった茶杓に、「初秋」という銘を付けたことがあります。
秋の始め、それまで長く勤めていた会社を辞め、取引先の方から転職祝いでいただいたものです。
「初秋」を使うと、その頃のことを思い出します。

 

なお、お稽古においては、客が茶杓の「銘を尋ねる」、亭主がそれに「答える」ということをしていて、季節にふさわしい銘を「あらかじめ考えておかなくちゃ」と考える方もいると思いますが、茶杓に銘がないといけないわけではありません。

お稽古では、あくまで亭主と客のやりとりのお稽古のために、「銘を尋ねる」「答える」ということをしているに過ぎません。むしろ、銘のない茶杓の方が一般的なはずです。

銘のある茶杓を持っていないと茶会をすることができない等、そんな風に考える必要もありません。
そんなことは、茶道の本質ではないですからね。

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