柄杓(ひしゃく)。
茶道で使う柄杓は、釜の湯や水指(みずさし)の水を汲んだりするための道具になります。
柄杓の扱い方の優雅さで、お点前をする人の茶道歴がわかると言われるぐらい、柄杓の扱いはなかなか難しいです。
流儀によって異なると思いますが、表千家の場合は、あくまで自然に、手と柄杓が一体かのように柄杓を自然な所作で扱うのが理想です。
持つ時も、置く時も、さりげなく、自然に。
ところで、「炉(ろ)」の季節と「風炉(ふろ)」の季節で、使う柄杓は基本的には違います。
これは、炉と風炉の違いによるものなので、まずは炉と風炉について説明します。
「炉」とは、囲炉裏の略ですが、釜を置く場所が、畳を切って作った下記写真のようなスタイルのことをいいます。11月から4月頃まで、釜をこのように使います。
一方、風炉とは、このように、畳の上に、釜を置く場合のことです。
風炉は、だいたい5月頃から10月まで使われます。
ご覧のとおり、炉は、風炉より、釜がお客に近い位置になります。つまり、寒い季節には、温かい釜をお客に近づけ、春や夏は、むしろ釜をお客から遠くに置くために風炉にするわけです。
このような季節による釜の違いは、その位置だけではなく、釜の大きさにもあります。
大きい方が、お湯をたっぷり入れられて、部屋も暖かくできますから、風炉で使う釜より、炉で使う釜の方が大振りなことが普通です。
ですから、釜の大きさに合わせて、柄杓も、風炉用より炉用の方が少し大きめのサイズになっています。
このように、道具や室礼が季節によって変わっていくのは、まさに、亭主の客に対する「おもてなしの心」と言えますし、季節の移ろいを感じられる風情でもあります。