濡れ燕 〜人間とツバメ、共生の歴史〜

この時期、「濡れ燕」というお菓子を、老舗の和菓子屋さんでよく見かけます。

写真は、金沢・森八さんの「濡れ燕」です。

雨の中、小さな燕が飛んでいるのがわかります(^ ^)

燕は、桜の散る頃、インドネシアやフィリピンといった南方から日本にやって来ます。あんなに小さい体で海を渡って来るなんて信じられませんね。驚嘆です。

そして、日本のこの時期の湿った土を使って巣を作り卵を産んで、子育てをします。

(前の年にすでに巣を作っている場合は、そこに戻ってくるらしいです。方向オンチの私には考えられません。。。驚嘆。)

子ツバメたちが大人になる秋頃、家族でまた南方に帰ります。
人生のスケールが大きいです。

ツバメは、外敵から身を守るために、人間の出入りの多いところに巣を作ります。ツバメの巣がある家は商売が繁盛するとか、幸せな家庭だとか、昔から言われますが、確かに、人の出入りが多い賑わったお家なら、実際そうなのかも知れません。

また、ツバメは鳥の中でもひときわ飛行能力が高く、「燕返し」と言われるように、瞬時に方向を変え、急転回することができます。

こうした身のこなしの軽やかさにあやかってか、刀の鍔(つば)の柄にも、ツバメはしばしば採用されてきました。

写真:https://www.choshuya.co.jp/senrigan/燕透図鐔%E3%80%80銘%E3%80%80武州住赤坂%E3%80%80彦十郎忠時作/鍔/忠時

深い青紫の羽の色をもつ子ツバメが空を飛び始める頃は、カキツバタが咲く時期です。

カキツバタに「燕子花」という字が当てられるのは、その姿が、空を舞う子ツバメをイメージさせるからでしょう。

ツバメは人間のそばで生きることを選択し、人間はツバメの到来で季節を感じ、両者は長い年月の間共生してきました。

こうしたことが、小さな和菓子から知ることができるのは、茶の楽しみのひとつでもあります。

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