なぜお茶碗を回す?

茶道をやったことのない方も、お茶会などに参加したことのない方も、茶道でお茶をいただく前に茶碗を「回す」というのは、何となくイメージとしては知っているのではないでしょうか。

でも、なぜ茶碗を回すのでしょう。

まず、亭主は、点てたお茶をお客に出す際は、もちろん、その茶碗の正面を客に向けて出します。

しかし、客は、正面に向けて出された茶碗を(表千家の場合)時計回りに回して、「正面を避けて」お茶をいただきます。


これが、茶道における「茶碗を回す」場面です。

客は、亭主が正面を向けて出してくれた茶碗の正面を避けるために、「わざわざ」茶碗を回してお茶を飲むのです。

これは、亭主に対する遠慮と敬意、からです。

「真ん中を避ける」というのは、たとえば神社の参拝方法などでもありますよね。ルールなのか慣習なのか、詳しくないのでこれ以上触れませんが・・・。

ただ、人の前を横切る時には、「ちょっと前を失礼します」なんて言ったりします。茶碗を回すのも、意味としては、そういう「相手への気遣い」と同じなのです。

表千家では、正面を向けて出された茶碗を時計回りに2回回して、だいたい90度動かしてお茶をいただきますが、意味さえ分かっていれば、「2回回さなければならない」「90度でなければならない」と頭でっかちに考える必要はありません。

流儀によって多少異なると思いますが、客がお茶をいただく作法をざっと説明すると、次のようになります。

1 まず、出されたお茶を自分の膝前に置いて、「お点前頂戴いたします」と亭主にご挨拶します。

2 右手で茶碗をとって左手を添え、両手でしっかりお茶碗を持ち、軽く押し戴きます(礼をします)。

3 そして、お茶をいただきます。よく本では「3口半」で吸い切ると書いていたりしますが、無理にそうする必要はないと思います。
お茶を「味わう」方が大切です。

4 最後の一口は、音を立てて吸いきります。
「音を立てて」吸い切るのも、亭主に「美味しくいただきました」という気持ちを表したいからです。

5 再び、茶碗を逆方向(時計と反対回り)に回して正面に戻し、畳の上、膝前において、茶碗を近くでじっくり鑑賞します。この「鑑賞」を茶道では「拝見」と言います。
どんな茶碗を選んでくれたのかな、と亭主に感謝ししつつ拝見するのです。

この時、客から茶碗についてお尋ねをして、亭主がこれに答えるというコミュニケーションが生まれます。

道具を介した亭主と客の心の通い合い、みたいなものがあって、これは、茶道における非常に重要な要素なんですよね。

実際のところは、お稽古しながら体感していっていただきたいものですが、茶道の真髄はこういうところにあるとも言えます^ ^

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