川瀬巴水 赤目千手の滝
スティーブ・ジョブズと言えば、誰もが知るアップルの創業者ですね。
日本文化をこよなく愛した人でもあります。何度も日本に訪れ、京都の俵屋旅館が常宿だったようです。川瀬巴水や伊東深水などの版画も収集していたとか。
その好み(感性)は、外国人が好みそうな華やかなものではなく、渋好みで、美意識の高い日本人のコレクターでないと感応しないような作品をパッと選んでいたという話もあります。
そして、ご存じの方も多いと思いますが、ジョブズは「禅」に傾倒していました。
禅宗を「美しく崇高と感じ」、深く感銘を受けた京都の庭園など、その文化は「禅が育んだもの」とまで語っています。
ジョブズが東洋思想に興味を抱くようになったのは大学生の頃のようです。
大学を中退した20歳の時に、人生の指針を求めてインド放浪の旅にでますが、期待はずれに終わり、シリコンバレーに戻った後、近所にあった「俳句禅堂」の門を叩きます。
俳句禅堂は、日本人の禅僧が、ガレージを改装し開いていた坐禅道場で、五七五と17人しか座れないことからこの名がついていました(粋な命名です)。
この俳句禅堂で、永平寺から派遣されていた乙川弘文という禅僧との出会いが、ジョブズが禅にのめり込んでいくきっかけとなります。
ジョブズのような、天才であり変人であり、溢れるエネルギーを持て余していたであろう青年が、坐禅を学び、仕事の相談をし、自身の結婚式(禅宗様式!)の式師となってもらったという乙川氏は、きっと偉大な禅僧であったのだろうと想像します。
1985年、ジョブズはアップルから追放され、10年後に見事復活するまでの間、暗黒時代を過ごしていたことはよく知られた話ですが、その間はとりわけ、ジョブズが禅と真剣に向き合った歳月だったようです。
当時ニューメキシコ州にいた乙川氏に、自邸の土地に乙川氏用の家を作るから、シリコンバレーに戻って来てほしいとまで申し出ています。結果、乙川氏は、年に数ヶ月、ジョブズの屋敷に同居することになりました。
86年には、乙川氏の里帰りに加茂市まで同行し、乙川氏の実家に寝泊まりしていたそう。
どんだけ乙川さんのことが好きなん?という感じですね。
ジョブズの彼に対する厚い信頼が伺えます。
そして、乙川氏に同行して加茂市に滞在していた折、ジョブズは、地元の耕泰寺の庭に面した縁側で1日中庭を見つめていたそうです。
禅宗は、坐禅を非常に重要視する宗教ですが、ジョブズは、坐禅についてこのように語っています。
「ただただ座って自分を見つめると、普段は捉えにくいものが聞こえる余地ができる。その時、直感が花開く。今まで見えなかったとてつもない広がりが眼前に開く」
もはや、悟りを開いたかのうようです。。。
96年、ジョブズは奇跡的にアップルに復帰し、その後iPhoneをはじめとした世界的ヒット商品を続々と発表することになります。
アップル製品のシンプルな、削ぎ落とした美意識のようなものは、ジョブズが禅に傾倒していたことと関連して語られることもありますね。
その真偽は分かりませんが、ただ、ジョブズが生涯坐禅を続けていたことは、その時間が、ジョブズにとって心を整え、脳の働きを研ぎ澄ますための、欠かせない習慣だったのだろうと私は思います。
このブログの別記事でも紹介しているとおり、茶道は歴史的に禅との関わりが深く、お稽古は、坐禅で得られるようなマインドフルな時間でもあります。
心を整え、脳の働きを研ぎ澄まし、そして美意識までも育てる・・・・
もっともっと、ビジネスパーソンの間に茶道の効用が広く知られて欲しいと思う私です(^ ^)
ジョブズも、日本の経営者みたいに、茶道もやっていたらもっと面白かったのになぁ(笑)。