いきなりですが・・・。結界。
「結界」は、仏教用語です。「あちら」と「こちら」を分かつところ、といったイメージでしょうか。
この写真は、小田原の海でして、空から海に続くグラデーションが、とっても綺麗でしょう??
撮影場所は、世界的アーティスト、杉本博司さんの江之浦測候所というアートスポットなんですが、杉本さんは、「結界」をイメージしてここを作られたのでは想像してしまいます。
ところで、茶道においても「結界的」概念があるんです。
実は、「扇子」が、その役割を担っています。
例えば、亭主や客同士で挨拶をする場合や、客が床の間を拝見する時などに、ひざ前にこのように扇子を置くのです。
これは、扇子の向こう側にある人や物に対する敬意を、言葉を使わずして表現しているものと考えられます。
結界の向こう側は敬うべき聖なる領域であるように、こうした作法も「あちら」側への「敬い」なのです。
また、寺院などで、縄で十字に縛ったこのような石をご覧になったことがある方も多いと思います。
「ここから先は行かないでね」という意味で置かれている「関守石」です。「止石」とも言います。
この関守石も、お茶の世界で時々見られます。
茶室に入る前の「露地(ろじ)」に降り立った客たちに、「ここから先は踏み込まないで」ということを伝えるために、亭主がこの関守石を置いているのです。
これもある意味、「向こう側」に踏み込まないという「敬意」を払ってもらうための、「結界的なるもの」と言っても良いのではないでしょうか。
このように、茶道には仏教的な要素が時々見られます。
歴史的に禅宗との深い関わりがあるので当然と言えば当然ですが、室礼や道具、型のある主客のコミュニケーションの在り方の中に、その思想の背景が仏教的なるものであることは多いと思います。
さて、最後に、最初の小田原の写真に戻りますが、実はここにも、よぉ〜く見ると、この関守石が置かれているんですよね。
ぜひ、アップして見てみてください(^ ^)
私は高所恐怖症なので、関守石のそばまで行くこともしませんでしたが(笑)、少し離れたところから、人智の及ばないあちら側の世界への畏怖、敬意、憧れetcを感じながら、この光景を眺めていたのでした。