亥の子餅

いのこもち。なんとも素朴なお姿です。

亥の月亥の日亥の刻に、お餅を食べると病気をしないという言い伝えが古代中国にあったらしい。亥の月とは、旧暦10月(新暦11月頃)、亥の刻とは午後10時頃。

また、イノシシは多産であることから、子孫繁栄を祈って、平安時代の宮中行事にこの亥の子餅を食べる習慣があったらしく、これが大衆の間にも広がって今に至るとか。

冬の始まるこの時期に、和菓子屋さんに並ぶ季節のお菓子と言えます。

写真は、京都仙太郎の亥の子餅。甘さ控えめで、とても美味しいです。
焼印を一筋つけているのは、イノシシの牙を現しているそう。
このシンプルさでイノシシと想像できてしまうのだから、面白いですよね。

ところで、この仙太郎の店舗には「身土不二」と大きく掲げられていました。

「身土不二」とは、「人間の体(身)と環境(土)は別々ではない(不二)」という意味です。

人間の体は、その土地の環境に密接に関わっており(人間そのものも環境の一部)、人間は、その生まれ育った土地で季節に応じて獲れるものを食することで健康でいられる、ということなんですね。

「三里四方のものを食べる」という言葉もほぼ同義ですね。人間は、歩いて獲れる範囲のものを食べることで健康でいられる、といった意味です。

日本国内にも地域ごとに特色や習慣がありますが、それぞれに、長くそこで収穫されてきた食べ物をいただくのがやはり自然なのです。言われてみれば当たり前にも思います。

日本には四季がありますが、暑い時には体を冷やす効果のある野菜や果物ができ、寒い時には体を温める根菜ができます。自然は、常にバランスをとってくれている、、、本当にすごいことです。

しかし今は、野菜や果物など、季節に関わらず一年中販売されています。それどころか、世界中から、日本と全く異なる自然環境で育ったもの、作られたものが、当たり前に市場に並んでいます。もはや、食文化は無秩序、と言っても過言ではないでしょう。

市場のグローバル化の是非を論ずるわけではないけれど、それで国内の農業や漁業、畜産が衰退して行くならば、そこに生きる人間にとって大きな損失であることは間違いないような気がします。

This site is protected by wp-copyrightpro.com