茶の湯・茶道の世界には、普段あまり聞きなれない言葉がたくさんあります。
お稽古をしながら覚えていけば良いものですが、茶道の世界観も少し伝わると思うので、茶道に興味がある(でもまだ茶道はしていない)という方のために、いくつか紹介してみたいと思います。
・手なり
茶道の点前の所作において、柄杓(ひしゃく)を扱う手が柄杓と一体かのように、自然な動きであるさまを「手なり」と言います。
力んでいたり、心に迷いがあると、手なりの美しい所作にはなりません。
柄杓の(美しい)扱いは、なかなか難しく、柄杓の扱い方でその人の茶道の経験値が見えるとも言われます。
・休め緒(やすめお)
濃茶を入れる「茶入(ちゃいれ)」は、「仕覆(しふく)」に入れられているのですが、中にお茶が入っている時と、入っていない時とでは、緒の結び方が異なります。
右の方が、お茶が入っていない時の結び方で、「休め緒」といいます。
使わない時は、紐や つがり が傷まないよう、このようにしておくのです。物を大事に扱う日本人の繊細さを感じますね。
・一客一亭(いっきゃくいってい)
茶の湯のひとときは、亭主と客の双方が一緒に作り上げるものですが、亭主がお客様を一対一でもてなす茶事(茶会)のことを、「一客一亭」といいます。
茶室という空間で、主客が共に相手を気遣いながら、茶を以て共有する即今のひと時は、日常ではなかなか味わえない、心地よい緊張だといえます。
・一期一会(いちごいちえ)
どなたも一度は聞いたことがあるかも知れませんが、この言葉は、徳川幕府時代の井伊直弼が、その著「茶の湯一会集(ちゃのゆいちえしゅう)」の中で述べた造語であることは、あまり知られていないのではないでしょうか。
井伊直弼は、千利休が、「特別な茶会であろうと、常の茶会であろうと、路地に入った瞬間から帰路につくまで、何一つ亭主のすることを見落とすことなく、一生に一度の機会であると緊張し、亭主に対して敬い畏れをもって接しなければならぬ」と教えたという話から、茶事は、毎回、生涯に一度であるという覚悟で臨むことを、茶人の基本精神として説いたのです。この概念は、茶道の在り方に深く関わっているといえます。
私たちの日常生活でも、「一期一会の精神で・・・」といったように使う時がありますよね。実は、茶道の世界観からきている言葉なのです。
・躙る(にじる)、躙口(にじりぐち)
客は、茶室に入る時、正座をしたような形で膝をくって茶室に入ります。これを「躙る(にじる)」と言います。
また、身をかがめて、躙ってしか入れないような、茶室の入り口を「躙口(にじりぐち)」と言います。
頭を下げて、躙って茶室に入るというこの作法は、茶道に流れる謙遜や敬意の気持ちの表れといえます。
これについては詳しく別の記事でもご紹介していますので、ご興味ある方はご覧ください。
いかがでしょうか。
言葉には、茶道の世界観、日本の伝統的な精神性などが宿っていますよね。
他にもたくさんありますが、また次の機会に。